車の個人売買の場合には、買主に対する車の引渡し前に、十分な車の整備が行われませんから、買主に車を引き渡した後に、車の欠陥によって、買主が買い取った車の運転ができないというケースがよく起こります。
そのような場合、買主は契約をキャンセルできるのでしょうか?
目次
車の個人売買の取引成立後のキャンセルはできるか
車の個人売買も契約ですので、そう簡単に、キャンセルすることはできません。
しかし、買った車に欠陥があったり、買主が代金を支払わない場合等には、契約をキャンセルできます。
車の個人売買は「現状引き渡し」の条件を付けることが多くなっています。
この「現状引き渡し」とは、「ノークレーム・ノーリターン」、すなわち、車の買主は、買い取った車に欠陥があっても、文句を言わないし、損賠の賠償も請求しないという約束を意味します。
「現状引き渡し」条件が付いていると、写真で見た時よりも買い取った車の車内が汚れているだとか、インターネットの掲示板に表示された車の走行距離と、買い取った時点での車の走行距離よりも多少多くなっているといった軽微な欠陥では、買主は、売買契約をキャンセルすることはできません。
どういった場合に、取引成立後にキャンセルができるか
民法では、売買の目的物に隠れた欠陥があり、買主がこれを知らず、かつ、そのために、契約をした目的を達できなかった場合には、契約を解除(キャンセル)できると規定しています。
(民法第570条で準用する民法第566条)
この規定に従うと、車の個人売買で取引成立後のキャンセルができるのは、取引の対象となる車に隠れた欠陥があり、買主が車の引き渡しを受けた後に、この欠陥に気づいた場合で、この欠陥のために、契約の目的を達できない場合には、契約をキャンセルできます。
売買契約の目的とは、車を日常生活で使うことでしょうから、たとえば、買い取った車のエンジンに重大な故障があったが、売買契約および車の引き渡しの時点では、買主がこれに気が付かず、買い取った後に、その重大な故障によって、日常生活でその車を使用できない、というケースで契約のキャンセルができます。
現状引き渡しでも、買主が契約を解除できる場合もある
売買契約の際に、現状引き渡しの条件を付けると、仮に、引き渡した車の欠陥によって買主が目的を達成できない場合でも、キャンセルはできないことになります。
現状引き渡しの条件は、実は、上記の民法の規定による売主の責任(瑕疵担保責任)を排除する規定に他なりません。
しかし、民法第572条では、仮に、現状引き渡し条件のような、瑕疵担保責任を排除する特約を設けていた場合でも、売主が知りながら告げなかった事実がある場合には、瑕疵担保責任は排除できない、と規定しています。
売主が、車に重大な欠陥があるにもかかわらず、それを買主に告げないで、現状引き渡しの条件で、買主に販売した場合で、その欠陥によって、買主が目的を達成できない(購入した車の運転ができない)ときは、現状引き渡しの条件があっても、買主は売買契約を解除できます。
車の個人売買契約にはクーリングオフは適用されない!
クーリングオフ制度とは、訪問販売や電話勧誘販売、マルチ商法等によって売買契約を締結した場合には、契約後、一定期間内(8日~20日)であれば、無条件で契約や申し込みのキャンセルができるというものです。
車の個人売買にクーリングオフ制度が適用されるとすれば、一定期間内であれば、取引成立後のキャンセルが無条件にできるのですが、残念ながら、車の個人売買は、クーリングオフの対象外となっています。
民法の瑕疵担保責任の規定があるとはいえ、いったん取引が成立してしまうと、たとえ車に欠陥があっても、そう簡単に契約のキャンセルができないようになっています。
よって、売買契約の前に、車の状態をよく確認したり、契約条件について売主とよく話し合うなどの、慎重な対応が必要となります。
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